総説

病原微生物にみるHello! Project流行の疫学的考察

(よいことイヤな大人のための伝染病講座)

 

毒ラスカル

イヤげリウム(http://users.hoops.ne.jp/iyage/)

(2001年8月7日初稿発表、2002年5月6日補稿)

キーワード:Hello!Project, モーニング娘。, インフルエンザウィルス, O-157, 遺伝子再集合, 形質導入, ゲノム, 流行

 

はじめに

「Hello!Project」は近年日本国内において主として若年層に流行している感染症の原因となっている病原体の一群であり、中でも性状を頻繁に変異させることによって発生から5年が経過した現在も流行が継続している「モーニング娘。」は多数の重篤患者が報告されている。これらの流行メカニズムについては現在までに識者によるいくつかの仮説が唱えられてきたが、今回、ウィルスや細菌といった既知の病原微生物の流行メカニズムとの比較によって多くの類似点が見出されたので報告する。

Hello!Projectには前述のモーニング娘。をはじめとして松浦亜弥、カントリー娘。、ココナッツ娘。、メロン記念日などの病原体が含まれる。吸血昆虫の媒介や経口、経気道感染は通常行われず、主として電波によって媒介されるが、患者への接触によっても患者の所持品を介した感染が成立する場合もある。潜伏期間は一定しないが、一般にオープンにカミングアウトする患者よりも自室などへの潜伏期間が長い患者の方が実は重篤化しているという報告もあるので注意が必要である。発症しても多くは社会生活に支障をきたさないが、重篤化すると「萌え」「追っかけ」といった症状を発症し、最悪の場合通常の社会生活が困難になる可能性もある。

流行のメカニズム1 インフルエンザウィルスとの比較

インフルエンザウィルスはオルソミクソウィルス科に分類される人畜共通感染症の原因ウィルスである。主として冬季に流行し、発熱と呼吸器症状を主徴とする。ワクチンが開発、使用されているにもかかわらず毎年のように流行が発生するのは、このウィルスが頻繁に変異を起こして新しいウィルス株を誕生させるためである。

 

インフルエンザウィルスに限らず、ウィルスの基本構造はDNAまたはRNAからなるゲノム(遺伝子)とそれを包み、保護する蛋白質のカプシドで構成される。インフルエンザウィルスのゲノムは1本鎖のRNAからなり(ヒトゲノムは2本鎖DNA)、1つのウィルス中には8本の異なったゲノムが含まれる(図1)。この8本のゲノムを有することがインフルエンザの抗原変異を起こしやすくしている。

図1インフルエンザウィルスの基本構造

 

 

例えばAとBという2種類の異なる株のウィルスが同じ1個の細胞に感染したとする。AとBは細胞内で増殖し、やがて細胞を破壊して多くの娘ウィルスが排出されるのであるが、この時娘ウィルスの8本のゲノムはAとBのものが何本かづつ混ざっており、娘ウィルスはAともBとも異なる性状を持ったCという新たな株として誕生する。これがインフルエンザウィルスの抗原変異のメカニズムであり、「遺伝子再集合(genetic-reassortmet)」と呼ばれる(図2)

図2遺伝子再集合

 

 

一方Hello!Projectの基本構造は「メンバー」と呼ばれるやはり独立したゲノムとそれを包括する「ユニット」とよばれる単位からなる。通常はほぼ一定したユニットごとに活動しているが、流行に陰りが見え始めると、遺伝子再集合が起こる。すなわち、ユニットを解体し、何本かのゲノムを新たなユニットで包括することにより変異株を生み出し、新たな流行を引き起こすのである。この変異株を「シャッフルユニット(shuffle-unit)と呼び、これまでに「ミニモニ」、「三人祭」、「7人祭」、「10人祭」などが報告されている(図3)。またこの現象には感染力の強いユニットと感染力の弱いユニットのゲノムをシャッフルすることで、Hello!Project全体における平均感染力の底上げが図れるという利点もあると考えられる。

図3Hello!Projectにおける遺伝子再集合

(図は2001年8月のデータによる)

 

流行のメカニズム2 病原性大腸菌O-157との比較

大腸菌(Escherichia coli)はごく普通に生体内で見られる腸内細菌であるが、後述の機構によってしばしばその遺伝子構造に変異を起こす。こうして変異した大腸菌の一つ、「O-157 H7」と呼ばれる株は、腸管出血性大腸菌(EHEC)として知られ、集団食中毒の原因となる。

大腸菌の変異は主として外部からもたらされた遺伝子を取り込むことで引き起こされる。多くはファージと呼ばれるウィルスが他の細菌に感染した際にその細菌の遺伝子を一部取り込んで増殖し、これが大腸菌に感染した際に他の細菌の遺伝子が大腸菌のゲノムに組み込まれる。これを「形質導入(transduction)と呼ぶ。O-157は元々無害だった大腸菌に毒素産生の遺伝子や感染力強化の遺伝子が形質導入された結果誕生したと考えられる(図3)

一方、Hello!Project、特に「モーニング娘。」における形質導入は、新たなゲノムがそっくり導入されることで成立する。これを「新メンバー加入」と呼ぶ。近年の傾向として、小児への感染に適応したゲノムの導入が顕著である。また、「モーニング娘。」などから様々な原因で起こるゲノムの欠損が報告されている。これを「脱退」あるいは「卒業」と呼ぶ。発生当初、「モーニング娘。」のゲノムは5本であったが、数回の導入、欠損を繰り返し、現在13本のゲノムを有している。最も最近欠損したゲノムは強力な感染因子をコードした最古のゲノムであり、一時期病原性の低下が専門家の間ではささやかれていたが、一方で最近の感染宿主域の低年齢化を目的とした新ゲノムの導入が特定の性癖を有する成体への病現性の増大をもたらし、むしろ危険度は高くなったのではないかと考えられる。

また、その他の形質導入の例として、不慮の事故により1本のゲノムが欠損した「カントリー娘。」への「モーニング娘。」からのゲノム導入が知られている。北海道を発生源とする「カントリー娘。」に同じ北海道起源のゲノムでなく、関東起源のゲノムが導入された原因は明らかではないが、仮に北海道起源のゲノムが導入された場合よりも結果的に強い病原性を獲得したものと見られている(2002年には新たな導入が確認され、現在カントリー娘。のゲノムはは3+1という特異な形態をとっている)。

 

流行のメカニズム3 毒素 

一般に細菌の毒素には菌体内部に存在する「内毒素(endotoxin)と外部に分泌される「外毒素(exotoxin)があるが、Hello!Projectはその両方を有する。

外毒素の本質はボツリヌス菌、コレラ菌などのように多くの場合菌体が分泌する蛋白質を主成分とした「酵素」であるが、Hello!Projectの外毒素はユニット単位で分泌され、通常「曲」と呼ばれる形態をとる。主として聴覚を刺激する神経毒であるが、視覚への刺激を伴った「ビデオ」「DVD」といった媒体を介した外毒素分泌も数多く報告されている。生体がこの毒素に冒されるとより大量の外毒素を要求するようになり、ついには電波を介さずに直接外毒素を摂取できる「ライヴ」への正の走性を示すようになる。

内毒素は菌体を構成する成分の一部であり、通常外毒素のように積極的に分泌はされないが、外部からの作用などによって菌体が破壊された際に大量に分泌される。Hello!Projectの内毒素は各々のゲノムに存在し、一般に「キャラクター」という言葉で表される。毒性はやはり神経毒あるが主として脳の性欲や想像力を司る部分を冒し、特定のゲノムからの刺激に対し激烈な反応を示す「萌え」という症状を発症しやすいので、外毒素よりも重篤に陥る危険性は高いと言える。主として歌番組のトークなどで電波行性に分泌されるが、近年の研究で内毒素の分泌にはレゼルボア(reservoir,増幅動物)の存在が重要な役割を果たすということが明らかになってきた。この場合のレゼルボアとして最も強力な動物種は司会者であり、この種の動物が行う「キャラいじり」という行動が各ゲノムに内包された内毒素を多量に分泌させるのである。

またここ数年「写真集」という内毒素に冒された患者に対して特異的に作用する外毒素が数種類検出され、その毒性はグラビアアイドルに匹敵するといわれる。

 

おわりに

これまで述べてきたように、Hello!Projectの流行メカニズムはウィルスや細菌といった他の病原体との共通点が示唆されている。しかしながら、未だにこの一群の感染症を防除するための手段は開発されておらず、今後の研究成果が待たれるところである。感染症の防除対策として最も効果的なのが媒介者(vector)の根絶であるが、Hello!Project流行に関与している媒介者は発生と同時に特定されているにもかかわらずその駆除が非常に困難であるため急激な終息は望めない。長期的な病原体への暴露による耐性、免疫の獲得(一般的に「飽きた」と表される)が徐々にこの流行を終息に向かわせるのではないかと考えられている。

参考文献

標準微生物学第6版:医学書院

モーニング娘。公式サイト

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