The Natural History Museum

(自然史博物館)

其の壱

 

 1881年に大英博物館から生物、地質学の分野を分離して設立された博物館。Alfred Waterhouseの設計による建物はいたるところに動植物のレリーフや装飾画が施されており、館長は展示物よりもそれらを見て廻る方に熱中してしまいました。

 数世紀にわたって世界中で採集された生物標本は現在絶滅した種も含め途方もない数になるはずですが、一般に公開されている展示はどちらかというとパネルやロボット、模型を使った現代的な自然科学学習センターみたいなものになっていて、私の持っていた剥製やホルマリン漬けがどばーっと並んでいるイメージとはかなり印象が違いました。しかしながら渡り廊下の壁を埋め尽くす海生爬虫類の化石や鉱物コレクションルーム、鳥類剥製の展示室なんかには古き良き博物学的陳列が残っているようです。

 さらに館長滞在中に新築された標本棟[Darwin Centre]が開館し、イメージしていた「標本どばーっ」が本当に一部公開となって超ラッキーって感じぃ。

例によって小さい写真をクリックすると大きいのが見られます。

 

館長の趣味によりこのページの内容はかなりヘヴィです。イヤげな写真、楽しい写真を見たい方は先に順路を廻ってください。

Waterhouse建築の技〜建物自体が最高の展示品〜
 正面ホールの天井。パネル一枚一枚に植物画が描かれています。見上げているといつの間にか口が開いてます。
 階段脇にある柱。猿が群れをなして登っています。この他にも魚、鳥、爬虫類など、あらゆる動物が壁や柱に彫刻されています。売店にはこの建物そのものに関する書物が売っており、動物オタクの館長が膨大な動物本を尻目に建造物本を買ってしまいました。
 猿の骸骨が群れをなして襲ってくる「悪魔城ドラキュラ」実写版。でなくて、吹き抜けになっている正面ホール2階(英国では1F。ちなみに1階はGround floor)の回廊。テナガザルがコマ送りになってます。

 上述の建造物本や売店の絵葉書にはドードーのレリーフの原画が描かれていました。博物館のマスコット的存在だけにどっか重要なポイントに配置されているのだらうと実物探して歩き回ったが見つからず、受付の姉ちゃんに絵葉書を見せて「これ、どこにあるんですか」と聞いてみました。しかし、姉ちゃんもレリーフの場所は知らなかった。結局絵葉書に書いてあった[South east gallary first floor]の文字をたよりにそこいら担当の学芸員に連絡をとり、やっとこ見つけたのは鉱石コレクションルームのどんづまりの非常口。分かるわけないよこんなところ。姉ちゃん「Oh,It's beautiful. Ha Ha Ha...」と何だか力の抜けた笑い。「全くめんどくさいとこに目ぇつけやがってこの東洋人は」と思ったのかもしれません。

 

ドードーを知っていますか〜ヒトに滅ぼされた動物たちのなれの果て〜
 ドードー(Dodo)。学名Raphus cucullatus(モーリシャスドードー) 。モーリシャス島、およびその近隣の小島に生息。公式記録では1598年発見。1681年絶滅。島に上陸したヨーロッパ人により100年足らずで絶滅させられる。名前の由来はオランダ語で「バカ」。「不思議の国のアリス」の登場人物として世界的に有名になり、絶滅動物のシンボル的存在とまで言われるが現物は骨格とオックスフォード大に乾燥した頭部、脚の標本があるのみ。図鑑で存在を知ってから20年余り、やっとご対面。ここをクリックするともうちょいいい写真が。
 あまりにも悔しいピンぼけ。大きさの比較にとあえて人を入れたのがまずかったのでしょうか。ニュージーランドに生息していたモア。玄関ホールをはさんでドードーと対峙しています。絶滅鳥類のもう一つのシンボル。だと勝手に思っています。

 

 館長が最も長時間その前に立ち尽くしていた展示。全て、人類の愚行により絶滅した鳥の剥製です。他の鳥の剥製と一緒にずらーっと並んでいるのですが、この一角の価値は奥能登の放置耕作地と銀座博品館くらい違います。ここにある2種のドードーの標本(左がモーリシャスドードー、右はレユニオンドードー)は博物画を基に作られたニセモノです。天下の大英博物館ですらこんなものを展示しているくらい本物の標本はこの世に残ってないのです。「バカ」と名付けられた鳥の存在が人類のバカさ加減を教える一つの教訓となっているわけです。

各標本を簡単に紹介しましょう。簡単じゃなく普通に紹介するとそれだけでHP1つ作ってしまう勢いなので。名前クリックでも大きな写真が出ます。

リョコウバト…北米に生息。かつては最も数の多い鳥といわれ、日光を遮る程の大群で移動した。アメリカの人口が増えるのと反比例して減少し、1914年絶滅。左が♂。

オオウミガラス…アイスランドなど北太平洋の島に生息。もともと「ペンギン」とはこの鳥につけられた名前。もちろん現在南半球に生息するペンギンとは別系統の生物。船乗りに狩られ、1844年絶滅。

フィア(ホオダレムクドリ)…ニュージーランドに生息。この剥製は♀。頭部だけの標本で嘴の短いのが♂。成鳥は常につがいで行動し、オスが木の幹に穴をあけ、メスが中から虫をつまみ出していたといわれる。1907年森林伐採による生息地の激減等で絶滅。

カロライナインコ…北米大陸に生息していた唯一のインコ。果樹園を荒らすため駆除され、1918年絶滅。

モーリシャスドードー…おそらく他の鳥の羽を使い、あまりにも有名になってしまった博物画をモデルに作られた模型。ゆえにあまり正確な復元でない可能性が高い。長らくハトの近縁であるといわれてきたが、最近のDNA鑑定によりそれが証明された。

レユニオンドードー…学名Raphus apterornis モーリシャスの隣のレユニオン島に生息。モーリシャスドードーとは別種とされる。白くて美しい羽を持っていたと伝えられるが標本が全く残ってない今となっては確かめる術はない。顔のアップ。もちろんこの模型もどこまで正確なのか誰も知らない。

 クァッガ。アフリカ南部に生息。体の前半分にしか縞模様がないシマウマ。名前は鳴き声がそう聞こえると現地の人がつけたらしい。入植してきた白人に狩リ尽くされ、1883年絶滅。
 フクロオオカミ。タスマニア島に生息。体の後ろ半分にある縞模様からタスマニアタイガーとも呼ばれる。化石種を除けば有袋類最大の肉食獣だったが移住してきた白人の羊を襲ったため害獣として徹底的に駆除された。1933年絶滅したことになっているが、現在でも時々目撃証言が報告される。

 

順路

The British Museum(1)(2)
The Natural History Museum(1)(2)
London Zoo(1)(2)(3)
Extra
倫敦コラム

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送